Intel Smart Response Technology(ISRT)の効能

今回は、ISRT(Intel Smart Response Technology)の効能についてレポートしたいと思います。ISRTは、ご存知の方も多いと思いますが、SSDをHDDのキャッシュに使うことで使い勝手向上させる機能です。拡張モードと最速モードの2種類があります。拡張モードは、ライトスルーモードのようで、書き込みが発生したときにSSDとHDDの両方に同時に書き込み、読み出しは、SSDにデータがあればSSDから読み出し、なければHDDから読み出すモードのようです。

また、最速モードは、ライトバックモードのようで、書き込み発生時にはとりあえず、SSDのみにデータを書きこんでおき、アイドル時にHDDにキャッシュしておいたデータを書き込むようです。読み出し時の動作は、ライトスルーと同じです。なお、OSがFLASH CACHEコマンド発行したときに、SSD内のデータがHDDに書き込まれるようになっているかは不明です。通常、ドライブの内蔵キャッシュは、FLASH CACHEコマンドが発行されると、キャッシュの内容をすべて書き込むのですが、ISRTは、このあたりをどう処理しているのでしょうか。FLASH CACHEコマンドは、かなり頻繁に発行されるので、ドライブ内蔵のキャッシュと同じ動作をしていると、かなり、頻繁にHDDへの書き込みが発生することになります。安全をとれば、これまで通りなのですが・・・。

テストに使用した機材は、以下のとおりです。CPUとかかなりケチっていますが、SSDのベンチ専用なので、ご勘弁ください。また、SSDベンチ専用なので、当然ですが、クロックアップなどしていませんし、する予定もありません。チェックに使ったSSDがSG2なのは、やっぱり、この手のものは、できるだけ安価なほうが良いだろうという判断からです(64GB以上のSSDなら普通にOS起動専用に使う人が多いのではないでしょうか)。また、ISRT使用時の設定ですが、SSD(SG2)のすべての容量をキャッシュに設定しています。

M/B:Gigabyte Z68MX-UD2H-B3(BIOS F4)
RAM:Corsair CMX4GX3M2A1600C9(2GBx2)
CPU:Core i3-2100(SSDのベンチ専用なので安いのです)
Video:CPU内蔵
HDD:ST2000DL001
SSD:TOSHIBA SG2(30GB)

さて、ベンチマークの結果ですが、定番のCryistal Disk Markからみていきます。ISRTの拡張モードは、リードに関しては、それなりに速くなりますが、ライトに関しては、SSDまたHDDの遅い方にあうという感じになりました。まあ、ライトスルーなのでライトに関しては、妥当な結果ではないでしょうか。リードに関しては、オーバーヘッドもあるのでしょうか、SSDの速度には達していません。まさにそれなりという感じでしょうか。また、最速モードは、ライトバックということもあり、書き込み速度は、まさにSG2のそれと同等です。リードに関しては、拡張モード同様にそれなりに高速化されています。


次に、PC Mark Vantage HDD Test Suiteの結果を掲載します。これは、キャッシュの効能をみるために、ISRTオンの状態は、3回テストを行っています。結果ですが、ISRTオンの状態では、拡張モード、最速モード共に、1度目は、HDDと同等程度の速度しか得られていません。しかし、2度目からは、SSDからの読み出しが行えるため、スコアが急激によくなっています。ただし、Cryistal Disk Mark同様にSSD単体の速度までは高速化されていません。


最後にOSの起動時間を計測していました。OSの起動時間は、bootracerというソフトを利用しました。このソフトは、WindowsのロゴがでてからOSにログオン後の処理が終了するまでを測定しており、パソコンの電源ONから、BIOSのイニシャライズ等の時間は省かれています。また、計測は、5回行ってその平均を掲載しており、ISRTをオンにした後に、OSを3回ほど起動してからOSの起動時間を計測しています。結果ですが、以下のようになりました。ISRTをオンにした状態では、拡張/最速、どちらのモードもSSD単体で使用したときに近いものとなっています。HDD単体では、約20秒ほどかかっていたところが、約10秒にまで短縮されています。厳密には、最速モードの方が拡張モードよりも1秒ほど遅いのですが、誤差の範囲といえなくもありません。いずれにしても、OSの起動に関しては、あきらかに効果があるようです。


駆け足でISRTの効果をみてきましたが、ISRTは、それなりには効果があるようです。ただ、SSDを単体で使った時ほどの性能がでないのは事実なので、過度な期待はしないほうが良いのではないかと思います。また、個人的な感想を言わせてもらえば、ISRTを積極的に使う意味は、少なくとも自作ユーザー(デスクトップユーザー)にはないと思います。というのも、今回検証に利用したTOSHIBA SG2の30GB版のように記録容量が少ないSSDであれば、容量的にも不安があるのでISRTで使うということは考えられなくはありません。しかし、現在の主流の64GBのSSDであれば、OSや普段使うアプリケーションをインストールしても、足りないということはほぼありません。つまり、64GBのSSDをISRTでキャッシュに使うぐらいなら、普通にOS起動用に使ったほうがより高速に使用できるのです。結果的にデスクトップの場合、拡張性にも優れているので、よほど安価なSSDでない限り、意味がないと思います。

ただし、ノートPCに限って言えば、話が少し変わります。ノートPCの場合、通常のSATAコネクタ以外に、mSATAのコネクタを搭載しておけば、比較的安価なアップグレードパスが与えられると考えられなくもないからです。SSDは、まだ高価ですから、とりあえず、そこそこの容量のHDDを付けておき、mSATAの小型小容量のSSDでISRTを使って高速化という選択肢は、アリだと思います。インテルもそのあたりを狙って、mSATAでSLCのSSDを投入しているのではないでしょうか。

コメント

  1. 最近ではマザーボード上にISRT用のSSDチップ?を載せたものも出てきましたね。SSDの書き込み回数制限的にはどうなんだろうとおもいましたけど

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  2. ISRT用のSSDとは、IntelのSLCチップ搭載の製品ですね。この製品は、先日使う機会がありましたが、素の状態でリード200MB/sec、ライト100MB/sec強というものです。ものは、もろIntel X-25VのSLCチップ版というもので、Trimにも対応しています。NANDメモリがSLCになっているので、その分、寿命も長いかと。

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  3. ISRT という「技術」と、
    mSATA という「仕様」を混同している
    …というか、同一視してしまってる人も多いようですね。
    http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1488929959

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