東芝 HG5シリーズ

東芝の最新SSD、HG5シリーズのベンチマーク結果やインタビューなどが、雑誌や海外のWebサイトで紹介されつつあります。今回は、国内での単体流通が始まったときに混乱しないように、HG5シリーズにおいて現在判明している情報をいくつか紹介したいと思います。この記事を載せて良いのか個人的には、わかりませんが、HG5シリーズの販売が始まればわかることなので事前に記事として掲載しようと思います。

最初に衝撃?の事実からお伝えします。実は、HG5シリーズには、コントローラの違いによって複数のラインが存在しています。一つは、現時点で東芝のWebページにもアップされているTHSNFという型番のシリーズです。この製品は、現在海外サイトなどベンチマーク結果が掲載されている製品です。コントローラに「Marvell」の文字が刻印されているSSDがそうです。このコントローラには、Marvellの刻印が入っているため88SS9187ベースの改良版かと思われる方もいるかもしれません。しかし、実際の設計は88SS9187とは大きく異なるようです。かなりの部分が東芝のカスタムによるようで、事実上の自社コントローラに近いものといっても良いものだと聞いています。

もう1つが、従来のHGシリーズでもお馴染みだったセミコン社の開発による東芝純正コントローラを搭載したバージョンです。最新カタログに「HG5d」として掲載されている「THNSNH」型番の製品がそうなのではないかと個人的には推測しています。このカタログは、東芝のWebページで入手可能なので、みていただければと思います。

2013.4.28追記
その後、セミコン版はキャンセルされたという情報を得ました。
このため、東芝製SSDは、しばらく、Marvell版のコントローラで行くということになるようです。最終的に誤報になってしまいました。申し訳ありません。お詫び致します。
HG5dに関して別記事にてフォローしたいと思います。

両者の仕様を見比べてみるとわかりますが、若干の変更が加わっています。リードライトともにセミコン版と推測されるHG5dの方が最大速度が若干早くなり、最低容量モデルは、記録容量が64GBから「60GB」へと変更されています。Marvell版とセミコン版でどのぐらい性能が異なるのかはわかりませんが、セミコン版の方が若干ですが書き込み速度等は速いと聞いています。(というか、Marvell版は、サチっているため最大書き込み速度が460MB/secほどで止まっている説が有力だと思います)

Marvell版とセミコン版で、その他の性能差がどれだけ違いがあるのかは、現時点では不明です。同じHG5シリーズなので、個人的な推測ですが、シーケンシャル時の最大書き込み速度以外は、性能的にはそれほど大きな違いはなく同程度だと思います。インタビュー記事などでもでている自社のエラー訂正や擬似SLCモード(リライアブルモード)の活用なども同じように設計されていると推測されます。

ちなみに擬似SLCモードですが、これは、MLC方式のNANDフラッシュにSLCライクな書き込みを行うというものです。MLCモードの場合、上位ページと下位ページの2つのページを書き込みますが、擬似SLCモードでは下位ページのみを使用します。このため、記録データ容量は1ビットになりますが、書き込み速度がメーカーいわく約4倍ぐらい速くなるようです。擬似SLCで使用する領域は、消去ブロック単位で指定でき、消去を行えばMLCモードで使用することもできます。

ただし、擬似SLCモードで使用したからといって、書き込みの保証回数が増えるわけではないようです。これは、MLC方式のNANDメモリは、あくまでMLCとして設計されているからです。SLCとして設計されているわけではないので、評価基準自体がMLCになるためSLCとイコールにはならないというわけです。ただ、eMLCのように書き込みや消去、読み出しに使用する電圧などのパラメーターを条件付き(データ保持期間を短くする)で最適化して、書き込み回数を増やしているケースもあります。このような最適化を擬似SLCモードで行った場合、書き込み回数を増やすことができる可能性をメーカーも否定してはいません。

コメント

  1. サチっているって何でしょう?
    結局、HG5とHG5dの違いは何でしょう?

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  2. サチるとは、処理能力の限界などによって飽和状態にあることです。
    ストレージでは、よくこの言葉を使います。

    HG5dのdが意味するのは、DevSleepの対応の「D」のようです。
    DevSleepでは、省電力状態からの復帰を行うために信号線を追加する必要があります。HG5のコントローラーでは、これに対応していなかったようです。HG5dに搭載されているコントローラーは、HG5のコントローラーをDevSleep対応にして、若干の修正を加えたものと聞いています。HG5よりも若干性能がアップしているのは、この修正によるものです。それ以外に違いはありません。

    ちなみに、海外ででているQシリーズProというのは、一度キャンセルになったと聞いたセミコン版コントローラが復活したものという話が入ってきています。国内でも来月辺りに登場するとかしないとか聞いています。

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  3. 英語のsaturate(飽和する)由来ですね。
    当方半導体系のエンジニアですが、こちらでもよく使います。

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  4. 回答のほどありがとうございます。なるほど業界用語だったのですね。業界外の私にはわからなかったわけです(笑
    ところで、HG5dはコントローラがマーベルの東芝向けカスタムだとして、当そば純正コントローラのSSDがすでに海外で発売されているということは、今後、日本でも期待できますね。
    それまで今しばらくはSSDの購入を待つことにいたします。日本での販売が始まって、評価が定まったころに、どちらを購入するか決めたいと思います。
    貴重な情報ありがとうございました。

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  5. HG5とHG6yの評判がすこぶる悪いのですが。
    耐久性がTLCのサムスン840以下という。
    Qシリーズはどうでしょう?
    Toshibaの19nmのNANDメモリーは問題ありなのでしょうか?

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    1. 海外向けのものは、Qシリーズが、HG5d。QシリーズPROが、HG6です。CFGが現在国内売っているHG6yとQシリーズPRO(HG6)の違いは、暗号化機能の有無だったと記憶しております。ということで、QシリーズPROは、HG6y相当だと思って頂いてよいと思います。

      また、個人的には、東芝のNANDメモリに問題があるとは思っていません。NANDメモリの書き込み速度や耐久性は、チューニングの仕方によって変わり、同じ東芝製NANDメモリを採用していてもメーカーごとに、耐久性は異なるからです。

      ちなみに、HG6ÿの場合、おそらく、データ保持期間1年、1日20GBの書き込みで3年または5年間の保証期間で設計されていると思います。この基準は、サムスンの840シリーズと同等です。
      HG6yの耐久性が840同等かそれ以下ぐらいというのは、単純に設計基準がそこにあるからだと思っています。これから考えると、設計基準通りになっているだけなのだと思います。

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  6. ご説明のほどどうもありがとうございます。

     「SSD耐久テスト」という有名なサイトがつぶされました。
    代理店業者からのメールがサイト閉鎖直前に掲載(しかも東芝SSDのテストのページ)されていて、そこには、「メーカーや代理店のことも考えろ、一時とは言え在庫を抱えることになった」とまるで脅しのような文句が書かれておりました。

     まさか東芝のような大企業が一個人のサイトにクレームを入れるとは思えないので、恐らく東芝のSSDを扱っている代理店業者(CFD?)からのメールかもしれません。

     そこでは、HG840(TLC)が計算上7年
    ですが、HG5dが5年7か月、HG6yが3年ちょっとでした。
    微細化が進み19nmでは限界が来ているのかと感じました。
    Intelの335も極端に寿命が短く、TLC以下でした。

    TLCが長持ちしているのは単に壊れやすいTLCの容量を倍くらい積んでるからであり、FLSHメモリ自体の強さではないことは百も承知ですが、なるほどこういう戦略もありか、と改めて感じました。正直、アンチサムスンでしたが、これをみてやられたな、と感じました。

    とはいえ、やはり、もしご説明通りであるなら、保証期間ギリギリ設計されている東芝のHG5DやHG6yを見ていると、ソニータイマーを思い出さざるを得ません…
    そういう製品をユーザーは買うでしょうか? 

     それはやはりメーカーのモノづくりの姿勢としてはどうなのか、と感じました。 おまけにMacに載せていた東芝SSDは、遅いうえにデータ破壊までして、リコールになりましたし。


     いずれにせよ、先のサイトを見ると21~19nmは明瞭に寿命が短くなっていますので、やはりもう限界にきているのかな、という印象を持ちました。できれば、24~25nmあたり(PlextprでいえばM3Pあたり)が、寿命と性能のバランスが取れていた印象を持っています。

    でも、もう売ってない…(泣

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    1. いわゆる1x世代以降のNANDメモリの寿命が、2x世代と比較して短いのは事実です。そのところを、TBWという寿命指針を使うことで、ユーザーに寿命は落ちてないよ、というイメージを与えて素通りしたのが現在のSSDです。

      ただ、個人的には、保証期間ギリギリと言われようとも東芝はやるべきことをやっているという点では高く評価しています。というのも、閉鎖された某耐久テストのページにおいて、リードオンリーモードがきちんと働くことが確認できたSSDは、東芝のみだったからです。

      SSDの理想的な壊れ方というのは、コントローラーやNANDメモリ、コンデンサなどのハード的な故障を除き、予備領域がなくなってリードオンリーモードとなって天寿をまっとうすることです。この機能は、SSDにかぎらず、HDDにも搭載されていますが、これが正常に機能していない可能性がある製品が多いのは、データ保護の観点から考えると、やはり問題だと思っています。特にSSDの場合は、必ず、寿命があるので、この機能がきちんと動作することは重要なのではないでしょうか。

      なお、リードオンリーモードになってからのデータ保持期間ですが、TBW値(HG6yは公開されていませんが)以内の場合で1年です。それを超えた書き込み量の場合は、1年を保証されませんので、いつデータが消えるかはわかりません。某耐久テストサイトのHG5dは、数日で一部のデータ消えたようですが、もちろんTBW値を超えた書き込み量となっているはずなので、数日で消えてもしょうがないかなという感じでみていました。

      ちなみに、HG6yには姉妹品にエンプラ向けのHK3Rシリーズという製品があります。この製品は、基本的にHG6yのファーム違いだったと記憶しております。HK3Rの場合、エンプラ向けなので、データ保持期間の保証は3ヶ月と短くなりますが、設計基準を変えるとこんな製品も作れるという良い見本かもしれません。その弊害として、若干書き込み速度を落として、予備領域を増やしていますが。

      HK3Rと似たコンセプトの製品としては、Intel 730シリーズがあります。730シリーズもクライアント基準ではなくエンプラ基準で設計された製品です。730シリーズの場合、データ保持期間が3ヶ月となっているだけでなく、NANDメモリも通常の製品よりも16GBほど多く搭載しています。この製品も書き込み速度や読み込み速度はクライアント向けよりも若干遅めです。

      こんな感じで、設計基準を変えると、性能は多少犠牲になるかもしれませんが、耐久性に振った設計をすることも可能だと思います。
      東芝の開発の方にお会いしたときに、この件は、伝えておきます。

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  7. ttp://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/hirasawa/20140701_655837.html

    これを見ると、ますます技術力に差が開いちゃいましたね…
    速度だけはなく、信頼性も薄れてくるとなると、東芝のSSDはやばいのでは?リードオンリーも怪しげな挙動しているようですし。

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  8.  ユーザー側としての理想は、速度重視のものと、信頼性重視(速度を落としてでも)の2系統があることでしょうか。

     正直、HG5dとHG6yの性能の低さ、壊れやすさには愕然としました。
    これはあまりにもひどいと… 保証期間が過ぎれば壊れるというのでは、まるでソニータイマーを持つソニー製品ではないですか…

     またデータ保持期間はかなり深刻に感じました。

     SSDを常時電源に接続させていれば問題はないのでしょうが、もし何らかの形で電源を入れない状態でいた場合、一週間も持たないというのはかなり怖いと思いました。

     例えば、海外旅行などで外付けHDDは物理的に破損の危険性があるので、外付けSSDを持って行った場合、旅行の仕方や旅行先如何では、一週間以上、外付けSSDに電源を通さないことは、普通にあり得ます。

     国内で外付けSSDとして使う場合でさえも、年配の方などは恐らく一週間以上、下手すれば半年以上、PCに接続させないということはあり得ます。
     ですので、速度という性能の限界を求めるだけではなく、信頼性の方に振ったSSDの開発も、できればしていただければと思います。

     東芝はそこに信頼性があったはずなのですが、残念ながら代理店からの圧力でつぶされてしまった上記のサイトでは、最近の東芝製品が最も性能的におとり、かつHG5dに関してはその信頼性までも失ったとみられたので、残念でした。

     今後はなんとか名誉挽回を!

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  9. 通りすがりです。
    東芝のSSDは壊れやすくはないですよ。
    19~20nmプロセスの一般的な寿命と思います。
    bochyworldの検証とは別にGigazineの検証では240GB級の各社のSSDがおおよそ600~800テラで壊れていること、120GB換算で300~400テラバイトです。両サイトもテスト方法にかなり疑問がありますね。

    NANDフラッシュメモリの寿命というのはデータ保持時間を決めないと出てこない。両サイト共におそらく数分~数十分程度のデータ保持時間で検証しているから本当ならばもっと手前で寿命が来ているSSDをテストしていた可能性がある。

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  10. あとV-NANDは面白い発想ではあるんですが、垂直方向への積み立てというのは要は半導体を結晶化させるわけで、本当に有利なのかをジャーナリストは取材して欲しいですね。

    半導体製品の価格はシリコン面積で決まりますから、これって半導体結晶の生成速度から来ていると思います。とすれば積層しても結局同じではないかと素人的には疑問を感じます。

    まあ、このあたりが半導体素人の疑問ですね。

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  11. 東芝のSSD壊れやすいですよ。
    その証拠に、Appleも他社も東芝のSSDを回収しましたし。問題が発覚したわけですよ。

    市場でのテストが確実な証拠ですね。
    おまけに、SSD耐久テストという有名なSSDの検証サイトに対して、東芝SSDを扱っていたCFD販売あたりがクレーム入れて、サイトをつぶしましたしね。

    東芝のSSDが壊れやすいことを証明した途端、東芝SSDを扱う代理店から苦情。代理店が在庫抱えるから考えてくれと。

    お前ら不良品を売りつけて、何言ってやがるんだと。

    あそこまでえげつない嫌がらせを東芝は行うのかと思いましたよ。

    さすが東芝は原発推進のブラック企業だけある。
    原発被害者へ東芝、日立も賠償しろよと言いたい。

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  12. アツくなっておられるところ申し訳ないのですが、Apple社が回収したSSDはsandforce製コントローラなので、HG5dでもHG6yでもありませんので悪しからず。

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